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見返りを求めず、そうせざるを得ないタイプ『かたあしだちょうのエルフ』

かたあしだちょうのエルフ
(文絵 おのきがく ポプラ社 1970年9月)



ご存じですか?
わたしは知らない絵本でした。
この絵本の存在を初めて知ったのは、過去のミリオンぶっく(100万部以上発行されている絵本のリスト)をトーハンさんに送っていただいたのがきっかけです。


2010年版と2011年版のミリオンぶっくに掲載されているのは確認できました。
2010年には90万部、2011年には95万部、つまりこの1年だけで5万部も発行されている絵本です。

けれどもわたしは全然知りませんでした。
作者さんも初めて見るお名前。

図書館に予約して借りてきました。

「教科書に出てくる本」という金のシールが貼ってあります。
1971年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書だそうです。

なんの前情報もなく、読んでみました。
表紙からイメージするものと実際の内容はまったくの予想外でした。

ああ。
こういうお話なんだ。

循環するお庭でシニアの皆さんに読んでみました。
循環するお庭のオーナーさんは表紙を見て、「懐かしい! でもどんなお話だったかしら」と。

読み終わって、皆さんの方を見ると、目を真っ赤にしている方が何人か。

版画で描かれています。

エルフ というのは アフリカの言葉で「千」のことなのだそうです。
エルフは、一息で千メートルも走ったことがあるくらい、若くて強くて素晴らしく大きなだちょう。

エルフは子どもが大好きです。
背中に子どもたちを乗せて、ドライブします。
途中で木の実やタネのお弁当を配ってくれます。
お母さんたちも安心してエルフに我が子を託しては仕事をしています。

ところが、あるとき、ライオンがやってきてエルフは、戦います。
ライオンを追い払うのですが、エルフは、足を一本食いちぎられてしまいます。

最初のうちは、エルフに食べ物を運んできた動物たちも、そのうち、自分のことでいっぱいで、だんだんエルフのことを忘れていきます。

あんなにいいように使ってたのに。
エルフのおかげで助かったのに。
見捨てちゃうんだね。
いとも容易く。

あるとき、黒豹に襲われます。
エルフは、逃げ遅れた子どもたちを、自分の背中に乗せて、一本足で戦います。

すると、そこには、エルフと同じ格好で大きな木が立っていた。
そして、下にはエルフの涙でできたのかも知れない泉ができていた。

そんなお話です。

あとがきには、こう書いてあります。

(以下引用)

その時、私の眼はある地理書の黒っぽい写真にそそがれていました。
アフリカの草原、中央に屹立したバオバブの大樹と雲だけの単調な風景でした。
と、急に頭の中で小型映写機がチカチカまわりはじめたのです。
一匹のだちょうがいろいろなことをしています。
大きな樹のシルエットが繰り返し繰り返しでてきます。断片的にさまざまな獣たちが吠えたり、あらわれるとみるやあとずさりして消えます。そうです、映写機は逆回転しているのです。私はあっけにとられ、時をわすれていました。瞬間、エルフの絵本はできたようでした。

(引用ここまで)

一枚の写真から、小野木学さんの頭の中に映写機が逆回転を始める。
そして、その瞬間に絵本ができあがる。

絵本の生まれる瞬間、物語が誕生する瞬間ってそういう場合があるんだなあ。

そしてきっと、この物語は、多くの人に感動とともに受け入れられた。
自分を顧みず、相手のために尽くすこと。
優しい心。

でも待って。
いいのかな。
エルフの周りの動物たちは、エルフが困っているときに助けてくれなかった。
弱っていくエルフを見て見ぬふりをした。
そんな相手をも、我が身を犠牲にしてでも助けることが良いことなのかな。

きっと、見返りを求めず、そうせざるを得ないタイプの人がいる、それがエルフ。
バオバブの大樹となって、別の命を生きることになった。

この絵本が、今もずっと売れ続けていたら、ミリオンぶっくに掲載されているはず。
でも載ってない。
95万部までは載ってるのだけれど。
イマドキ、こういうお話し、ウケないのかもなあ。
どうなんだろう?
学童さんに読んでみたいです。


かたあしだちょうのエルフ
(文絵 おのきがく ポプラ社 1970年9月)




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#読んでみたいと思ってもらいたい
#ほぼ毎日絵本紹介ライブ
#上甲の絵本紹介ライブ

こちらでも『かたあしだちょうのエルフ』ご紹介しています





ミリオンぶっく じっくり読むと面白いです。
100万部も発行されているのに、読んだことない絵本がたくさん存在しています。
100万部以上発行されるってすごいことなのに。
それだけ読者に支持されている、ってことですよね。
知らない絵本は読んでみます。

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