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「少年たちよ しかと自分で真実を見極めてくれよ」小学6年生に読んだ絵本『むらの英雄』

エチオピアのむかしばなし『むらの英雄』(わたなべしげお 文 にしむらしげお 絵 瑞雲舎 2013年)

この絵本は、1983年刊行のペンギン社版『むらの英雄』を新装版として復刊したそうです。

数年、わたしの脳内の「欲しい絵本リスト」の上位にあり、迷っていた絵本です。
2022年3月についに購入しました。

表紙から受けるなんとなく地味なイメージと、中身のお話にギャップのある絵本だなと思います。
色使いも、黒多めのオレンジと青と白で、なんか地味な印象を拭えず。

ところが、お話がなんとも、間抜けでおかしいのです。

間抜けなんて言っちゃいましたが、わたしは、数を数えるのがものすごく下手なので、他人事とは思えません。

数を数えるのに、自分を勘定に入れない。

アホらしいけど、そういうことはある、と思います。

わたしと似たような人がこんなにいる。

12人の男たちが粉を挽いてもらうために村から町へ。
帰りに人数を数えたら、自分を勘定に入れなかったので、11人しかいない。

いなくなったその人は、最初は憶測だったのだけど、そのうち、ヒョウに食われてしまったことになった。

その人は、いかに勇敢にヒョウと戦ったか、いかに親切で優しい人だったか、と口々に嘆き悲しみます。
12人いるのにね。

泣きながら、村に帰ってきます。12人で。

村人たちもオイオイ嘆き悲しんでいると、女の子が、男たちの粉袋の数を数えて、12人いるはずだといいます。

そうです、最初からずっと12人いるんです。

すると、いなくなったその人が、果敢にも帰ってきたことになります。

そして、村中で踊り、歌い、ご馳走を食べてお祭りをします。

なんだか、平和じゃないですか。

あるものが ないことになり
ないものが あることになる

それは時に悲劇を生み出すかもしれないけれど
ここではむしろ喜劇になっている

いつだって、この絵本のように、平和な方に転がればいい。

本当のことが見えるのは、大人じゃなくて、なんの先入観もない 子どもである
ってことは、現実にもあるかもしれないな。

そんなことを考えながら、小学6年生のクラスで読みました。

「エチオピアって知ってる?」なんて聞いたりして。


少年たちよ。
大人たちの曇った目、自分で確かめもしない、思い込みや、先入観や、噂や、偶像や、そんなのに騙されないで、しかと自分で真実を見極めてくれよ。

この絵本を復刊した瑞雲舎の井上みほ子さんが講演会でお話ししてくださいました。
(2017年12月 小田原にて)

復刊するにあたり、原画がなかったので、元のペンギン社の絵本をスキャンして原画を作成したそうです。
作業中、机からその原画が落ちて、ハッと気づいたそうです。
「絵巻物になっている!」
最初の、ヒョウにやられたという妄想が始まるところから、12番目の男の妄想までが、一枚にながーい絵として繋がっているんですって。



エチオピアのむかしばなし『むらの英雄』(わたなべしげお 文 にしむらしげお 絵 瑞雲舎 2013年)




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