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どうぞカバーはつけたままで『14ひきのひっこし』

14ひきのひっこし』(いわむらかずお 童心社 1983年7月)



この絵本を2002年に購入したわたしが、後悔していること。
それは、カバーを外してしまったこと。
この絵本、カバーと表紙で絵が違うんですって!
気づかなかった〜。知らなかった〜。
これから購入する方は、カバーはつけたまま、そのつど、どこが違うか探すのも楽しんでください。

わたしは、この絵本は大勢の前での読み聞かせ会ではほとんど読んだことがないです。
ピッタリくっついて、マンツーマンで、あれこれおしゃべりしながら、行きつ戻りつしながら楽しむ絵本。

表紙と裏表紙を広げると、14ひきのねずみの名前が書かれています。
本文中に描かれている14ひきのねずみが誰なのか、子どもはちゃんとわかるんです。
わたしは、何度も表紙と裏表紙に戻って確認しないとわからないのに。
子どもってすごいなあと素直に感服します。

テキストでは、
「おっと、しりもち つきそうなのは だれ?」とちょいちょい問いかけがあるので、すみずみまで絵をじっくり見るよう自然に促されます。

そして、テキストは一番下のほそーい隙間に1行分だけ。
これも、大勢の前での読み聞かせには向かない理由の一つ。
だって持ち手に隠れて字が読めないんです。だから、1対1で読むことを想定しているんだと思います。
絵の上にテキストが乗っていないので、絵はテキスト用の空きの部分がなく、絵は絵として存分に楽しめます。

いわむらかずおさんは、絵の上に文字を乗せたくなかったそうです。
言葉は、説明ではなく、絵の中に入るきっかけとしたそうです。

表紙の次の見返しには、引越し先の全景が描かれています。
ああ、ここに無事、引っ越せるのだなと暗示されています。

14ひきが引っ越すことになった理由は、言葉では表現されませんが、切り株がいくつか描かれています。
ああ、住処を奪われたのだなと想像できます。
森の奥に移動し、良さげな根っこを見つけて、新しいうちにします。
家族みんなで協力して、部屋を作ったり、川から水を引いたり、橋をかけたり、食べ物を集めたりします。
そして、そろって夕ご飯を食べるのです。

いわむらかずおさんは、「小さい野ねずみだったら、この景色はどう見えるだろう?」と考えたそうです。小さな世界をクローズアップするために、野ねずみを主人公にしたそうです。ちなみに、りすで描いたら、尻尾だらけになったのでやめたそうです。

いわむらかずおさんのお母さんは、他人の前でも、我が子を悪く言わない人だったそうです。
「しっかりなさってよろしいですわね」と言われたら
「ええ、なかなか、ガンバリヤなんですよ」と平気で言うので、いわむらかずおさんは横で聞いていて恥ずかしかったそうです。
でも、「ガンバリヤ」の称号で実際がんばれるってことはあるかもしれませんよね。
つい、よその人には「愚息が」と落として言うことが良いことみたいな、「うちの子ダメダメ自慢」をしちゃうみたいなことはあるかもしれないけれど、親バカと言われようがなんだろうが、我が子に「称号」を与えるっていいなって思いました。


14ひきはシリーズで揃えたくなりますよね。(わたしは「ひっこし」「ぴくにっく」「とんぼいけ」の3冊しか持っていないのですが)
デザインが統一されているのが一つの理由かと思います。

ブックデザインは、上條 喬久(かみじょう たかひさ)さんという方です。

紀文のちくわやサントリーモルツのデザイン、ヨネックス、ライオン、積水ハウスなどのコーポレートアイデンティティ(CI)ロゴを手がけたアートディレクターなんだそうですよ。


2024年5月、童心社会長 酒井京子さんの講演会に参加しました。
酒井京子さんは、『おしいれのぼうけん』(古田足日 田畑精一 童心社)などを編集された編集者さんです。

『14ひきシリーズ』についてお話してくださいました。
わたしが特に印象に残ったエピソードをいくつかご紹介したいと思います。

いい絵本ができるとき、作者の中に渦巻くものがあるそうです。いわむらかずおさんは描きたくて描きたくてしょうがない。
でも、酒井京子さんが、童心社の編集会議にかけたら、総スカン。「童心社で出す必要ないじゃない」と言われてしまったそうです。
酒井さんは、編集長に泣きついて出版することになったそうです。

ところが、中身はいいけれど、表紙が問題。14匹がごちゃごちゃ描いてあったそうです。タイトル案も『14ひきのかぞく』。どうにかしなくちゃと思った酒井さんは、デザイナーを入れたいと思ったそうです。

そこで、童心社が1977年に出版した画集『原爆の絵 HIROSHIMA』のデザインをしてくれた上條喬久さんにお願いしたそうです。

上條喬久さんといわむらかずおさんは東京藝術大学の同級生なんだそうです。

上條さんは「がんさん(いわむらかずおさん)のこの絵をどこかで切ったりするのはもったいない」と、絵の下に文章を持ってくることに。

何文字入るか決まってしまうし、真ん中で言葉が切れると読みにくいので、収まりのいい文章を考えるのがすごく大変だったそうです。
シリーズ2冊目までは絵の下の部分がスパッと切れているが、3冊目以降は、ちょっとギザギザしているそうです。

上條さんは、印刷についてもとても厳しく、小宮山印刷さんはすごく苦労したそうです。
パントーンという1.2倍高いフランスのインクに、メジュームという真っ白いのを入れて、見応えのある、それでいてくすんでいない印刷に仕上がったそうです。
(ところが、いわむらかずおさんは不満だったが、ここは折れた。上條さんとは力点の置き方が違う。)(原画を美術館でみてみたいです)
小宮山印刷のTさんは「僕が刷る!」と言って、できたものを家に持ち帰り、子どもに「これはお父さんが刷ったんだよ」と見せたそうです。

みんなが、この本をいい本にしようという気持ちで集まった、そのときに酒井さんは
二度目の「神様が降りてきた瞬間」を感じたそうです。





14ひきのひっこし』(いわむらかずお 童心社 1983年7月)


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