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たやすく歓声が上がるので読んでいて快感を味わえる絵本『まあちゃんのながいかみ』

毎月1回、絵本を持って保育園にお邪魔しています。
3歳、4歳、5歳さんに聞いてみました。

「この中で、一番、髪の毛が長い人は誰ですか?」

「はい!」「はい!」と何人か手をあげてくれる中、先生が「**ちゃんね」と教えてくれました。

一番前に座っている女の子でした。

「ちょっと立ってみて」と先生に促され、長い髪の毛を見せてくれました。

「ありがとね。じゃあ、この絵本を読みます」

『まあちゃんのながいかみ』 
(たかどのほうこ 作 福音館書店 1989年9月 こどものとも年中向き)


3人の女の子が、おやつを食べているようです。

こんなふうに始まります。

(以下引用)
はあちゃんと みいちゃんは、かみのながいのが じまんです。
でも、まあちゃんのかみは みじかい おかっぱです。

「あたしたち、まだ もっと のばすの。ねぇ」
と、はあちゃんと みいちゃんは いいました。
「ふーん、どのくらい?」
と、まあちゃんは ききました。
「せなかが せーんぶ かくれるくらいよ。ね、はあちゃん」
「ね、みいちゃん」

(引用ここまで)

この3人のやりとり、いいですよねえ。
女子あるある。
「あたしたち」ってのもいい。
「わたしたち」じゃない。
「あたしたち」

女が3人いると、2対1に分かれるのも、あるかるかなと。

女子トークでお話は進んでいきます。

ページをめくると、こんなふうに続きます。

(以下引用)
「なーんだ、あんたたち たったのそれしか のばさないの?
あたしなんかね、もっと ずっと のばすんだから」
と、まあちゃんが いいました。
「へえ、どれくらい?」
「もっと、ずっとずっとずっとずっと、ずうーっとよ!
そのながいことったらね……」

(引用ここまで)

へえ、どのくらいだろう?
と一堂みんなが思わされて、ページをめくると、まあちゃんの妄想が次から次へと炸裂します。

その際には、必ず、次のページをめくりたくなるような
「それにね……」
というまあちゃんの言葉でうながされるのがニクイです。

しかも、ちょいちょい、絵本を縦にするダイナミックな展開もあるので、思わず歓声をあげてしまいます。

そうきたかー
そうきたかー
とまあちゃんの妄想はとどまることがありません。

そのたびに、たやすく歓声が上がるので読んでいて快感を味わえます。

一緒に聞いてくれていた園長先生が、終わってから「全部のページがカラーじゃないんだね、モノクロのページもあるんだね」と驚いていました。

そうなんです。まあちゃんとはあちゃんとみいちゃんのお喋りの場面は、モノクロで紙の色がクリーム色です。
まあちゃんの妄想の場面はカラーです。

わたしは、この絵本が大好きで大好きで大好きです。
購入したのは、平成16年(2004年)です。
三木卓さんが記念講演をしてくださった神奈川県子ども読書推進フォーラムに参加したときに購入しました。
2004年と言えば、わたしが読み聞かせボランティアを始めた年です。
我が子以外の、よその子に絵本を読むことの楽しさを知ってしまった年です。
そしてこの絵本は、人前で絵本を読み始めたわたしの十八番の絵本でした。

「上甲=まあちゃん」というくらい、当時の読み聞かせボランティア仲間は強くインプットしてくれています。

そしていまだに、まあちゃんは、間違いない絵本です。

今回、奥付をまじまじと読んで、初めてちゃんと認識したのですが、それまでは、児童文学の創作をされていた高楼方子(たかどのほうこ)さんが、初めて「作・絵」をされた絵本なのですね。

こんな記事を見つけましたのでご紹介します。

童話作家だった たかどのほうこさんは、当初は「お話」だけを依頼されたのですね。
しかも、初めての絵本だった、と。

(以下引用)
『まあちゃんのながいかみ』をかいた頃のこと たかどのほうこ

これまでとは違ったお話作りをしなくちゃならないのかもしれない。そう考えて、それまでぼんやり見ていた「こどものとも」をちょっと神妙に開いてみると、まあ何とこの本の横に長いこと! 私は単純にも、横にびゅーんと伸びてるか、ずらずら並んでるもの、または上から下にざあーっと垂れてるか、下から上に伸びてくものといった、とにかく長めの画面を想像し、それに即したお話を作るよりないんじゃないか、と思ってしまったわけでした。
(中略)

けれど、この被害妄想の途中で、まあ自然な連想ではあるけれど、『ラプンツエル』のことを思い出したのです。
(中略)
そしてついでに、その頃夢に描いていた自分の姿のことなどを、続々と思い出したのです。長い三つ編みをなびかせて、さりげなく友達を誘いに行くシーンなどを……。そう、伸ばしたかったんだよなあ……。
――と、思いを転がしているうちに、『まあちゃんのながいかみ』の構想は、ほとんどできあがっていたのでした。どんなとっかかりからお話を考え始めても、結局自分の中にあるものに行き着いてしまうということなのでしょうね。良くも悪くも。
さて、原稿を届ける段になって、ふと心配になりました。文章というにはあまりに短いこの字だけを見せられても、見た人はきっとチンプンカンプンに違いない。ここはもうお節介だろうが、「こういうことなの」と下手な絵で示すしかない。というわけで、豆絵本を作って行きました。「想像場面の華麗さを強調したいので現実場面は、ほらこうやってモノクロにするんです」なあんて言いながら。――そしてこれが、絵にまで手を染めるきっかけになってしまったのでした。(編集者の想像力を正しく見積もっていたなら、事態は変わっていたことでしょう。むむう)
さて、絵を描き始めたとき、近くに小さな姪がいたのは幸運でした。スケッチしようと椅子にすわってもらうと、椅子の脚の横木にするっと爪先を絡ませてすましています。さすが子どもだとおかしくなりました。横木がなければまっすぐ下におろすしかないところが、あったおかげで子どもならではの表情が出たのです。
(中略)
稚拙な絵だけれど殊勝な気持ちで丁寧に作ったこの本。今もまだたくさんの子が喜んでくれるらしいのです。うれしいことです。

(引用ここまで)

ほんとだ。
気づかなかったです。
まあちゃんがおさげで洗濯物を干している場面。
読んでいる絵本が『どろんこハリー』であることに気を取られていて、足を椅子に絡ませていることに気づきませんでした。
確かに。こんなふうにしますね。

なるほど。
こどものともの判型が横長だということからのお話の発想なのですね。
「どんなとっかかりからお話を考え始めても、結局自分の中にあるものに行き着いてしまうということなのでしょうね。」
だからこそ、生き生きとした子どもが描かれるのでしょうね。
お話ができあがって、豆本を描いてくれたことによって、この絵本は絵もたかどのほうこさんで誕生したのですね。
たかどのほうこさんの絵以外には考えられない。
この絵で本当に本当に良かったです。

わたしにとっての読み聞かせボランティア定番絵本で鉄板絵本の1冊です。

『まあちゃんのながいかみ』 
(たかどのほうこ 作 福音館書店 1989年9月 こどものとも年中向き)


インスタグラムでも『まあちゃんのながいかみ』ご紹介しています

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