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「笑いをとる」喜びを味わうことができる落語絵本『じゅげむ』(ただし事前練習必須)

落語絵本 じゅげむ
(川端誠 クレヨンハウス 1998年4月)


落語のことはよくわからない人でも、「じゅげむ」は聞いたことがある噺かもしれませんね。
落語家さんになりきって、ちょこっと声色も使い分けたりして、リズムに乗ってテンポよく読むと拍手と歓声と笑い声をもらえて嬉しい絵本です。
練習が必要です。

わたしは、地元小田原ご出身の柳家三三さんの落語会に行くことがあります。
小道具は扇子と手ぬぐいだけ、座布団に座ったまま、たった一人で何役も演じ分ける話芸。

あの落語が絵本になると、絵があるし、テキストがあります。

だから、素人でも、基本的にはただ読むだけで、落語を日常的に楽しむことができます。
でもやっぱり、せっかくだから、落語っぽく読みたいです。

ちなみに「じゅげむ」というのは、長生きできるような縁起のいいありがたい言葉を全部つなげた子どもの名前の最初の部分です。

名前の全部はこんなに長い。

(以下引用)
じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきれ、かいじゃりすいぎょ、すいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ、くうねるところにすむところ、やあぶらこうじのやぶこうじ
パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイの、ポンポコピーの、ポンポコナーの、ちょうきゅうめいの、ちょうすけ。

(引用ここまで)

これは、子どもの頃、なぜか唱えるのが流行った時期があったのかそれほど苦労せず自然に言えました。
この絵本には、それぞれの意味をお坊さんが教えてくれます。

お坊さんと、この子のお父さんとのやりとりが落語的に面白いのです。

(以下引用)
「じゅげむ…? なんですか、
毛虫ですか?」
「そうではない。寿(ことぶき)、限り、無し、
で、寿限無じゃ」
「へええ、それは、いいですね。
ほかにないですか?」
「五劫のすりきれというのは、
どうじゃな」
「すりきれちゃったら
よくないようなきがしますが…」
「三千年にいちど、天女がまいおりて、
はごろもで、岩をこする。
この岩が、すりきれて
なくなるのが一劫。
これが五つもあるのだから、
かぎりないのと
おなじじゃよ」
(引用ここまで)

へー。そうなんだ。

シニアの皆さんの読みましたら、「意味は知らなかったわ」と大変喜ばれました。
合間合間に「あはははは」と声をあげて笑ってくれて、「笑いをとる」喜びを味わえました。

この長ーい名前を繰り返し唱える可笑しさ。
しかしただ、馬鹿馬鹿しいだけじゃない。

(以下引用)
山上 憶良のうたに、
「銀(しろがね)も金(くがね)も玉もなにせむに 
まされる宝 子にしかめやも」
というのがありまして、
ほんとうに、子宝にまさる宝は、
ありませんもんで、
(引用ここまで)

親の子どもへの愛情が描かれています。
子どもが愛おしいばかりに、親はばかになっちゃうときがあります。

バカにする笑いじゃないんです。

冒頭のじゅげむちゃんの枕元。
ちゃんと絵を見たことなかったんですが、
「布おむつ」「張子の虎」が置いてあります。
張子の虎は、子どもの健やかな成長や厄除けの願いを込めて飾る縁起物です。
虎は「一日にして千里を行き、千里を帰る」そうです。

この絵本は、わたしにとっては、いわくつきの絵本です。
子どもが、小学校1年生の夏休み明けから、突然、学校に行けなくなりました。
フルタイムで働く母だったわたしは、困ってしまい、あちこちに相談しました。どこに相談しても、パッとしなかったです。なんの解決にも慰めにもなりませんでした。
そんなとき、わたしの絵本の恩師が勧めてくれたのがこの絵本でした。
当時のわたしは、正直、ピンときてなかったと思います。
ただ、今振り返って考えるに、ただただ、「あははは」と笑える絵本、笑う時間が必要だよというメッセージだったのかもしれないな。
そして、親は、馬鹿みたいに子どもを愛していいんだよっていう肯定だったのかもしれないな、と20年も経って、やっと恩師からのメッセージを受け取れた気がしています。

落語絵本 じゅげむ
(川端誠 クレヨンハウス 1998年4月)


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