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泳げない子を勇気づけイメトレさせる名作絵本『およぐ』

7月初めの読み聞かせ。
小学2年生のクラス。
前日の夜、ふと、気づきました。
この絵本を持っていったらいいかも。
ドンピシャでした。

プールの授業がある日だったのです。

『およぐ』
(なかのひろたか 福音館書店 1978年8月号 かがくのとも 1981年2月 かがくのとも傑作集)



「もしかしてだけど、今日、プールの授業あるの?」

「あるー!」

「みんなは、泳げる?」

「泳げる!」
「習ってるもん」
と言う子と
首を横に振る子と。

「あのね、上甲はね、小学3年生まで全く泳げなかったの。
顔が水に濡れるのが大嫌いだったんだよね。
じゃあ、この絵本、読むね」
と読み始めました。

この絵本がまた、読み手と聞き手の呼吸が合うのです。

こんなふうに始まります。


(以下引用)
いぬは いぬかきおよぎ。
ねこも いぬかきおよぎ。
(引用ここまで)




ここで、ざわめきます。
ページをめくると、さらに畳みかけるように


(以下引用)
みんな おなじ いぬかきおよぎ。
(引用ここまで)




「へー。そうなんだー」と驚きの声。
絵本は問いかけの言葉と答えが続きます。


(以下引用)
でも、なぜ およげるのだろう。
それは からだが みずに うくからだ。
(引用ここまで)



明快です。断定します。
そして、人間の体も水に浮くかどうか、銭湯で試してみます。
このページも、裸の体がチラ見えするので、ひそひそとざわめきます。

ページをめくると、さらに、人間の体が浮く理由をたたみかけます。


(以下引用)
はいに すいこんだ くうきが
うきぶくろの はたらきをして
にんげんの からだは みずに
うきやすくなるんだ。
(引用ここまで)




だから 沈まない。
ここでみんな、思わず深呼吸するよね。

ページをめくると
いよいよ プールへ行きます。

最大の難関は、顔が水に濡れること。


(以下引用)
「うわーん。かおが みずに ぬれちゃった」
これは こまったぞ。 かおが みずに ぬれても
へいきにならないと およげない。
(引用ここまで)




ここで聞き手の感情がグラっと動くようです。
顔が水に濡れるのが嫌な子はいますよね。嫌だよね。わかります。


(以下引用)
おもいきって かおを みずに つけてみよう。
「いやだ」
(引用ここまで)



初めて吹き出しで大きく、はっきり拒絶。これがいい。嫌なことを嫌だとはっきり拒絶することを絵本で描いているのがいいです。
ここは、はっきり、万感の思いを込めて「いやだ」と読みます。


このあとは、水のかけっこという荒療治が続きます(笑)
やるよね〜。結局、顔が水に濡れるのが平気になるには、こういうことで慣れるしかないのよね。

ここでプールから上がります。
洗面器で息を吐く練習をします。
鼻からじゃなくて、口から吐く。吐き出しながら、顔をあげます。
体は安全地帯にいるから、怖いけど、大丈夫。何度か繰り返すと、一緒にエアでやってくれます。

このあと、プールで手を持ってもらって浮かびます。

一人でやってみる動きがスローモーションのように3パターン描かれています。
イメージしやすいです。
フォントが大きくなり、当然、ちょっと大きな声で読みます。


(以下引用)
うかんだ、うかんだ。
(引用ここまで)




ラスト。太いゴシックで


(以下引用)
ばたばたばた・・・
(引用ここまで)




足だけが描かれています。
そして、裏表紙へ。
そして表紙も開いて広げて見せて、
「ばたばたばた・・・」と言うと歓声が上がります。
みんな笑顔。
最高。
素晴らしい。
傑作!
ブラボー!!

イメトレバッチリです。
もちろん、読んだからってすぐに泳げるようになるわけはないです。
でも、人の体は沈まないんだ。
一つ一つ、練習すれば、泳げるようになるのだ、と勇気づけてくれる絵本です。

出版したとき、なかのひろたかさん36歳ですよ。



インスタグラムでも『およぐ』ご紹介しています




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