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いともたやすく子どもが笑うので、読んでいる人は嬉しくなっちゃう『いっぽんばしわたる』

いっぽんばしわたる
(五味太郎 絵本館 1979年11月)


ほかの絵本ではあまり見ないようなブルーの背景。
真ん中より少し下に白い橋。
この一本橋を、左から右へ渡る動物。
影が真下にあるから、真上から太陽が照っているんでしょう。

ページをめくるとこんなふうに始まります。
左ページの真ん中に1行だけ。


(以下引用)
ぴょん ぴょん わたる
(引用ここまで)



右側のページには、一本橋を渡るうさぎの絵。

いろんな生き物が、どんなふうに渡るかを
最小限の言葉と、ああ、なるほど、とクスッと笑える絵で繰り返し表されます。

わたしが好きなのは


「むりして わたる」
「わざわざ わたる」
「しらずに わたる」




この言葉にどんな絵があるか。
ニヤニヤ。

ラストのオチもいいんですよ。

この絵本を読むと、いともたやすく子どもが笑うので、読んでいるわたしは、嬉しくなっちゃうんです。

この絵本は、わたしに絵本の面白さを気づかせてくれた恩師が、プレゼントしてくれた1冊です。
2003年のことです。
長女が生後10ヶ月のとき。

お気に入りで、何度も繰り返し読みました。
そしてなぜか、文字のところを鉛筆で ◯ といたずらがきされています。
裏見返しには、鉛筆で人の顔が描いてあります。




だから今、読み聞かせボランティアでよその子に読むと、(あ!)という顔をする子がいたり、「めっちゃ落書きしてあんじゃん!」とツッコミが入ったります。

挙げ句の果てには、以前、保育園に持って行ったとき、読もうとしたら、全てのページが雨で濡れて乾いてくっついていて、そろそろそろそろ、破かないように、くっついたページをぺりぺりぺりぺりと剥がしながら読みました。
違う意味で、ウケました。
(五味太郎さん、絵本館さん、ごめんなさい)

2024年7月7日、平井書店主催 絵本館の創業者 有川裕俊さんのブックセミナーに参加しました。




有川さんが、長新太さんに「絵本にとって大切なのは『省略』ですね」と言ったら、
やっとわかったかというように嬉しそうに笑って、「そして、『飛躍」ね」と言ったんだそうです。

また、五味太郎さんは
絵本は「いきなり始まる」「いきなり終わる」ことができると言ったそうです。

「省略」「飛躍」「いきなり始まる」「いきなり終わる」
「それはどんな絵本ですか?」
と聞かれたら、わたしはこの絵本がそうなんじゃないかと思います。

言葉はギリギリまで「省略」されています。
説明は一切ない。
強引にわからせようとしてない。
そうきて、そうきて、そうくるか!という驚き。これは「飛躍」と言えるのではないでしょうか。
そして、理由なんか提示せず、
「いきなり始まる」
「いきなり終わる」
まさにこれなんだなあ、この絵本。

それを子どもは喜ぶ。

省略された部分を自分で補いながら読む。
飛躍にハッと心が動く。
グダグダ説明はいらない。
そういうことなのだなあ。
この絵本は、子どもの想像力を全面的に信頼してるのだなあ。


いっぽんばしわたる
(五味太郎 絵本館 1979年11月)

インスタグラムでも『いっぽんばしわたる』ご紹介しています



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