Blog ブログ

体験入学受付中

HOME // ブログ // 不幸な絵本『ちへいせんのみえるところ』

Blog ブログ

CATEGORY


おすすめ絵本

不幸な絵本『ちへいせんのみえるところ』

ちへいせんのみえるところ
(長新太 ビリケン出版 1998年10月)
1978年 エイプリル・ミュージック(現ソニーマガジンズ)より出版されたものが復刊されています。


もしも、本屋さんでこの絵本を手に取って、中を開いて読んでみたとしたら、
「これは…いったい…どういう意味がある絵本なんだ?」とそのまま、そっと閉じて棚に戻すでしょう。
かつてのわたしはそうでした。

言葉は「でました。」のみ。
一番長い文は、タイトル。

真ん中に地平線があって、空と大地に分かれています。
空は曇っているようです。
大地は、草原のようです。

ページをめくると、いろんなものが次々と、出ます。
脈絡なく。
唐突に。

この絵本を買うのは、勇気が要ります。
わたしが、この絵本を買うことに背中を押してくれたのは、福音館書店の『母の友』という月刊誌の2014年4月号でした。

「子どもがはじめてであう絵本」という特集の中で、心理学者の佐々木宏子さんがこんふうにお話ししてました。


(以下引用)
作者自身が、ヤングアダルト向けのつもりで描いたと語っていますが、これを0歳の赤ちゃんが見て、『うふ』とか『あは』とか笑うんですよ。もう何度も繰り返して読まされる。こんな本を赤ちゃんが好むとは夢にも思いませんでした。私は『でました』という言葉に反応しているのか、絵なのか確かめたいと思って、まったく別の図鑑を開いて『でました』と読んでみたのですが、きょとんとしていましたね。やっぱり絵と言葉が一体となってひきつけているのです。
(引用ここまで)




「こんな本」って言っちゃってます。
わたしも、試してみよう、と思いました。
それで、ついに購入して、読んでみたんです。この訳のわからない絵本を。

そしたら、子どもたちが大喜びするのです。
驚きましたねえ。
赤ちゃんは元より、幼児さん、小学生。
もう、ドッカン、ドッカン、大笑い。
転げ回って笑ってる子もいます。
そんなに?

先日も、小学2年生に読みましたが、ツッコミを入れながら、大笑い。

こちらはただ、淡々と「でました。」と読むだけで、こんなに喜んでもらえるなんて。
楽。

「不幸な絵本」です。
だって、お金を出して絵本を買うのは、大人です。
その大人がこの絵本の面白さをわからない。だから、買わない。
すると子どもに届かない。
こんなに子どもは好きな絵本なのに、届かない。
今は、買えない絵本になっています。
残念過ぎます。

この子どもたちの姿を長新太さんに見てもらいたかったなーっていつも思います。


2016年 刈谷市美術館での長新太の脳内地図展にいったときのブログ




ちへいせんのみえるところ
(長新太 ビリケン出版 1998年10月)

インスタグラムでも『ちへいせんのみえるところ』ご紹介しています



ブログ一覧