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学童保育所で読んだら、太鼓のセッションが始まった『ヒキガエルがいく』

ヒキガエルがいく
(パクジォンチェ 作 申明浩・広松由希子 訳 岩波書店 2019年6月)


大きい絵本です。
横開きの絵本です。
開くと迫力があります。
表紙からして、ヒキガエルのドアップ。
ど迫力。

この絵本、読み始めると、ハッとします。

言葉は、太鼓の音、なんです。
太鼓の音でお話が進んでいくんです。
タイトルの通り、「ヒキガエルがいく」物語です。
太鼓の音は、BGMとも違う、「命の鼓動」のような感じです。
どう読んだらいいのか、正解はわかりませんが、書いてあるとおりに、読みます。
元の韓国語ではどう読まれるのか、どう翻訳したのか、知りたいです。


夏休みに突入した学童保育所で読みました。

「ヒキガエル?」
「わ! おデブちゃんだ!」

しばらくして
「あ! これ 太鼓じゃん!」
とバチで太鼓を叩くマネをし始めた男の子。
読みながら、わたしはその子にアイコンタクトを送り、
コールアンドレスポンス。

「ドンドン ダンダン ドンドン ダンダン」
「ドンドン ダンダン ドンドン ダンダン」

みんなも声を出し始める。

「ドドン ドドン ダンダンダン」
「ドドン ドドン ダンダンダン」

太鼓でセッションみたいな感じになってきました。

「トトトン トトトン ダンダンダン」 
「トトトン トトトン ダンダンダン」

ヒキガエルが交尾する場面。

「ピタ!」
「ピタ!」

最後は、太鼓の音がなくなり、静寂となって終わります。

「これね、どこの国の絵本だと思う?
これね、実は、韓国の絵本。
韓国にも太鼓があるんだって」
「へー」

発売された2019年当時に、原画展をあちこちでされていたようなんです。
原画を見たかったです。

奥付の作者紹介のところにこんなことが書いてあります。


(以下引用)
2014年4月16日に起きたセウォル号の惨事に突き動かされ、「自分の話ではなく、私たちの話を描きたい、他人の痛みを受け止める作家になりたい」と願うようになり、『ヒキガエルがいく』を描く。
(引用ここまで)




驚きです。
この絵本だけを読んだら、セウォル号の「セ」の字もない。

あの事件に突き動かされ、ヒキガエルがいく、交尾する、新しい命が生まれる、こう表現するか〜
言葉は、押しつけがましいことは一切なく、太鼓の音。
言葉でのメッセージを込めたくなりがち。

想いがあって、マグマがあって、それをどう「変換」して絵本として「表現」するか。
そこにただならぬものを感じます。

作者がどんな想いを持っていようが、「絵本」として勝負するしかない、とわたしは思います。
安易に言葉に頼ってメッセージを伝えるのか。
いや。
この絵本は、相手(読み手)を信じて委ねちゃってる。

それが独りよがりになっている絵本は「イタイ」から、わたしは購入しませんが。

この絵本は、違う。
ただならぬ「なにか」がビシバシと伝わってくる。


茗荷谷のてんしん書房さんで出会いました


ヒキガエルがいく
(パクジォンチェ 作 申明浩・広松由希子 訳 岩波書店 2019年6月)

インスタグラムでも『ヒキガエルがいく』ご紹介しています



翻訳者の広松由希子さんが、ツイッター(現エックス)にてコメントくださいました。(2024年8月15日)



(以下引用)
そのまま太鼓の音を読んでいただけるように、フォントや文字間、サイズの調整などにこだわりました。韓国語と日本語の擬音の感覚がちがうので、申さんと相談しながら翻訳と推敲にはすごく時間をかけ、ひたすらオノマトペのみの共訳が実現しました。
(引用ここまで)


なるほどー。
韓国語の擬音をそのまま、日本語にしたわけではないのですね。
韓国語でも聞いてみたいです。





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