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1ページ目からまさかの大ウケ 次第にシンと静まりかえり『ねずみじょうど』

ねずみじょうど
(瀬田貞二 再話 丸木位里 画 福音館書店 1967年3月 こどものとも)


表紙の絵を見て、どう感じますか?

黄土色の無地の背景に手の指4本に乗せられたネズミ。
このネズミは、安心している気がします。
この手は人物は優しい人のような気がします。
裏表紙にも、手のひらにネズミが描かれています。
こちらのネズミも恐怖心は抱いていないような気がします。
指の折り曲げ具合からも、わたしは、優しさを感じます。

なんと、
第1回ブラティスラヴァ世界絵本原画展にて優良賞受賞を受賞した絵です。

中を見てみましょう。



(以下引用)
むかし、あるところに、びんぼうな じいさんと
ばあさんが おりました。
あるひ、じいさんは、やまへ しばかりに いくので、
「ばあさん、なにか、たべるものを こしらえてくれねえかい」
と たのむと、ばあさんは、そばこを こねて そばもちを ひとつ、こしらえました。
(引用ここまで)




あいや〜。
ぼんやりとした目鼻口。
バサッとしてて、実際はどうなっているのか不明な髪型。
黒い床と一体化したような胴体。
背景は真っ白。
失礼ながら、なんだか、わたしでも描けそうな絵、に一瞬見えなくもない。
でもそれは、大きな勘違いです。
おじいさんは縄をなっているし、おばあさんは、そばもちをひとつ、こしらえたんだなとわかる。
貧乏なのが伝わるし、なんなら善人なのも伝わる。
こんな感じで、この先の絵も、唯一無二。
おんなじような絵を描ける人はいないだろうなあ。
わざと、すみで上から塗って、輪郭も、何をしているか、はっきり見えなくしてあったり。

じっくり見ると、じわじわじわじわ、おかしくなる。二足歩行しているネズミの動きとか。
それでいて、次第におぞましさも感じる。
ラストの絵は壮絶です。

月刊絵本「こどものとも」で1967年に出版されているということは、対象年齢は、年長さん、5歳、6歳くらいなのかと思います。
裏表紙には
「読んであげるなら 4才〜 自分で読むなら 小学校初級むき」
と書いてあります。

1950年から、妻俊(とし)さんとともに『原爆の図』を描き始めた丸木位里さん。
その丸木位里さん絵を子どもに見せようという心意気に感銘します。

でも。
実際、この絵本を子どもたちはどう感じるだろうか。
見た目の色づかいは地味だし、なんとなく、気後れして読めずにいました。

夏休みや春休みの学童保育所に絵本を読みに行きます。
彼らはいつも「怖い絵本、持ってきた?」としつこく言います。
この絵本はある意味、怖い絵本と言えるかもしれないなと思って、読んでみました。

1ページ目からまさかの大ウケ。
「顔が渋い!」
「顔が渋い!」
「面白い!!」

笑い声がすご過ぎて呼吸困難気味にすら。

「一回みんなで深呼吸しようぜ! 
まぢで深呼吸! 
深呼吸!」

と上級生の男の子が指示出しするほど。

ええ?
この絵本でなんでそんなに笑えるの?
わからない。
わからないけど、なぜか大ウケ。

「ヒャヒャヒャヒャヒャ(笑)」
「おむすびころりんだ!」
「おむすびころりんじゃん!」

でも、次第にシンと静まり返り。
昔話のちから。
ひしひしと感じました。

「怖いというより、面白い」
「なんか力が湧いてきました!」
と言ってくれる男子も。

声に出して読んでみるとよくわかるのですが、瀬田貞二さんの言葉が良いのです。



(以下引用)
じいさんが あなの そばに こしを おろして、
「はあ、しかたねえなあ」と こぼしていると、
「じいさん じいさん、ただいまは、けっこうな ごちそうを
ありがとさん。なにもないけど、ちょっくら うちへ よって
くだされや。それ、まなこを つむって、この しっぽに しっかり
つかまって、な」と ねずみごえで いいました。
(引用ここまで)




「ねずみごえで」読むんです。
「ありがとさん」とか「ちょっくら」とか「くだされや」とか、いいじゃないですか。

「『まなこ』って何?」って読んでいる途中で聞いてくる子がしました。
わたしは、大袈裟にまばたきをしながら、読み進めていましたら、
「目のことだよ」と教えてくれる子が。

すごいなあ。
絵の持つ力。
昔話の持つ力。

ねずみじょうど
(瀬田貞二 再話 丸木位里 画 福音館書店 1967年3月 こどものとも)

インスタグラムでも『ねずみじょうど』ご紹介しています


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