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ポケモンと共に過ごした人も そんな子どものそばにいた大人もグッとくる絵本『ポケモンのしま』 

ポケモンのしま
(ザ・キャビンカンパニー 小学館 2020年3月)


夏休み中の学童保育所で読みました。

「あのね、上甲には子どもが3人いるんだけどね。
一番上の子が今、26歳ね。生まれたときに、近所のおばさんが毛布をくれたんだけどさ。
それが『ポケモン』の毛布だったの」


↑今でも愛用中の毛布と、ボロボロの『ポケモンをさがせ!』(相原和典画 小学館)

「ポケモンって知ってる?」
「知ってる〜!」
「ピカチューとか、リザードンとか、サトシとか」
「サトシはもういないよ」
「へー、そうなんだ。じゃあ、この絵本を読むね」

表紙に描かれているポケモンに彼らはにじり寄り、口々に名前を教えてくれました。
わたしはもう、うろ覚え。
進化系とか散々覚えさせられたけど。

ポケモンのしまでポケモンが待っている。
チラリと見える姿で、なんのポケモンか、彼ら(学童さん)にはわかるらしい。

この島に、舟に乗って「ゆめた」がやってきます。

「サトシじゃないのかよ!」とツッコミが。

そうなのよ、サトシじゃないのよ。
このゆめたは、サトシじゃダメなの。
ゆめたは、あなたであり、わたしであるのだから。

ゆめたとポケモンたちは毎日遊びます。
空で。
穴を掘って。
野原で。

ゆめたは大きくなります。
進化します。
辛いカレーも食べられます。
スケートもできます。
波乗りもできます。

それぞれの場所で活躍できるポケモンが描かれます。
学童さんたちは、それがなんなのか、わたしに教えてくれます。
時折、学童保育所の指導員の青年が、正確に教えてくれるポケモンもいます。
「『サムワラー』じゃなくて、『サワムラー』な」とかね。

ゆめたくんは、どんどん成長し、舟に乗れなくなります。
ゆめたくんは、ポケモンたちとさよならします。

ポケモンたちは泣きます。

この場面で、わたしも内心、グッと泣きそうになるのを必死で堪えます。

そうなんです。
大人になって、ポケモンは卒業するのです。
その道を確かに たどってきた。

見開きにびっしりとポケモンがいます。
圧巻です。

カビゴン、ドードー、ドードリオ、ナッシー、イワーク、ルージュラ、キャタピー、イシツブテ、ヤドラン、ラプラス、ヒトデマン、コダック、エビワラー、ダグトリオ、ニョロゾ、フシギソウ、ギャロップ、ケンタロス、マダツボミ、ウツボット、マルマイン、ストライク、コルダック、ラフレシア、バラス、ニャース、スターミー、ニョロモ、ベトベター、、、

学童保育所の彼らは、どんどんにじり寄ってきます。

そうか。
ポケモンは、大人になったゆめたを今も応援してくれているんだな。

ゆめたくんは、行ってしまいます。

ポケモンのしまに、小さな子がまたやってきます。

ポケモンはいつだって待っていてくれるんだな。

ポケモンの絵本でまさか自分が泣きそうになるなんて、予想だにしなかったです。

わたしは、2024年夏に平塚市美術館で開催中のザ・キャビンカンパニーさんの「大絵本美術展 童堂賛歌(ドウドウサンカ)」でこの絵本に出会いました。


本当はずっと前から、買おうかどうしようか迷っているザ・キャビンカンパニーさんの別の絵本がありました。

絵本を自由に読めるコーナーがあって、そこで読んで、やっぱりグッと泣きそうになって、この絵本を買うことを決めました。


また、たくさんの展示がある中で、わたしの心をわしづかんだのが、ザ・キャビンカンパニーさんの祖母作というポケモンのぬいぐるみでした。


なんと愛らしい。

なんと愛おしい。

担当学芸員さんのギャラリートークで知ったのですが、「ポケモンの絵本を作って欲しい」というオファーをお二人は何度も断ったそうです。
ポケモンの存在が偉大すぎて。

奥付にある作者のことば
(以下引用)

うちのアトリエにはポケモンのぬいぐるみが30匹ほどいます。ブラブラと吊り下げられ、私たちが絵を描いているところを背後から見守ってくれています。このぬいぐるみは、私たちが子どものころ、おばあちゃんが縫ってくれた手作りのポケモン人形です。当時10才。私たちはポケモンが大好きでした。
平成元年(1989年)生まれの私たちにとって、ポケモンは「子ども時代」そのものです。(中略)ポケモンが社会現象となっていく。その真っただ中に、アニメの主人公のサトシくんと同じ、10才の私たちがいました。ポケモンのことを考えると、同時に、あのころ見ていた景色が思い起こされます。登下校の道、友達の声、草むらの匂い、森の中の秘密基地、おでこに光るあせ、おおきな入道雲。子どものころの私たちにとって、ポケモンの空想世界と、現実世界の線引きはあいまいで、公園のアゲハチョウがバタフリーだと、虫取りあみを振り回していました。心や頭で見ているものと、実際に存在しているものとが、ぼんやりトロトロと混ざり合い、世界は広々と、夢幻的で、美しかったように思います。それは、知識、経験が増え、空想する力が弱まった大人には、感じることが難しい刹那的な世界です。この「子ども時代」の感覚を、私たちは作品をつくるときに、とても大切にしています。ポケモンは私たちの制作衝動の原点の一つなのです。

ザ・キャビンカンパニー
阿部健太朗/吉岡紗希

(引用ここまで)

あの圧倒的なまでの熱量の高い創作の源部分に「ポケモン」がいる。

そんなお二人だからこその、この絵本なのだなと思いました。

子ども時代にポケモンと共に過ごした人にも、そんな子どものそばにいた大人にも、グッとくる絵本。
こうやって、進化(成長)していくんだなあって。
ゆめたは、我が子であり、あなたであり、わたしである。
だから、サトシじゃダメで、ゆめた である必要があるのだな。

ポケモンのしま
(ザ・キャビンカンパニー 小学館 2020年3月)

インスタグラムでも『ポケモンのしま』 ご紹介しています

 

 

 こちらの展示も圧巻でした→「ポケモン×工芸展」

 

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