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「仕事」があっという間に「遊び」だらけに『こぐまちゃんのみずあそび』

こぐまちゃんのみずあそび
(わかやまけん 森比左志 わだよしおみ こぐま社 1971年11月)


こぐまちゃんシリーズと言えば、圧倒的に「ほっとけーき」が人気ですが、わたしはこちらも好きです。
暑い時期には読みたくなります。

「水物(ミズモノ)絵本」ですね。



(以下引用)
はなに みずを あげるのは
こぐまちゃんの しごとです
(引用ここまで)




「仕事」なんです。
最初は「仕事」だったんです。

でもすぐに「遊び」に変わります。

金魚に「ふんすいだよ」、アリの行列に「おみずを あげよう」とジョウロの水をかけます。

そのうち、しろくまちゃんがホースを持ってきて、こぐまちゃんも持ってきて、水のかけ放題になります。

見開きに二人がホースで水のかけっこをしてます。

「おもしろい おもしろい」と言ってます。実は、最初から最後までずっと無表情のままなのがおもしろい。
ここは、こちら読み手と聞き手の想像力に委ねられているんでしょう。

二人は泥んこになり、シャワーを浴びます。
そこでも遊びは続きます。
洗面器を頭にかぶって、シャワーが当たる音を楽しんでいます。

「仕事」があっという間に「遊び」だらけになりました。

これぞ、「夏のこども」です。

水さえあれば、家の周りで遊べる。
どこか遠くへ連れて行かなくても。
夏限定の絵本ではないと思いますが、暑い時期に読みたい絵本です。


ちなみに、「はなに みずを やる」じゃないんですね。
「やる」は立場の低いものに対して、「あげる」は同等の立場のものに対して使い分けるそうです。
リズムが狂うからかな。
花も同等の立場としてるのかな。
余計なことだけど、福音館書店の松居直さんは「子どもに本を読んで やる」と言いますね。


ちなみに、表紙には「わかやまけん」のみ作者名が表記されていますが、奥付には、著者として「森比左志 わだよしおみ 若山憲」と記載があります。

この3人と「発行者 佐藤英和」を含めた4人でこぐまちゃんシリーズは生み出されたそうです。
この4人のおじさんたちは、ホットケーキを実際に焼いてみたりしたそうですから、きっとこの絵本を作るときも、実際にこんなふうに水遊びをしてみたんでしょうかね?
想像すると微笑ましいです。

巻末に、森久保仙太郎さんによる文章が掲載されています。
(20年以上前からこの絵本を読んでいるのに、読んだことがなかったです)

森久保仙太郎さん=森比左志さん(『はらぺこあおむし』の翻訳されている方)です。


(以下引用)

「こぐまちゃんのみずあそび」のねらい

★幼児の“いたずら。の大切さ

今日の子どもに、ほんとの遊びがなくなったといわれます。
今の子どもは、いたずらをとりあげられているともいわれます。
子どものための “いたずら復活論,は活潑です。
いたずらは、子どもが自分からやりたいと思ってやる活動です。
自主的なのです。
親が指図をするものでなく、親の目をかいくぐってやります。
行動の芽として大事な点です。
おもしろいので、あれこれくふうし、うまくいくと喜び、失敗したら自分からやり直します。
すべて、創造性への芽として見逃がせません。
“いけませんよ”と叱ってやめさせるなんて、とてももったいないことです。

★水あそびの中から

ひとつは、いたずら的遊びに、うまく道具を使います。
如露、ホース、洗面器などから、木の葉やアリまで、いたずらの手伝いに活かされます。
子どもの活動を拡げるため、すべてにこうありたいものです。
つぎに、いたずらには、つぎつぎへの発展、応用があることです。
如露で、水を花にかけるのは当然のことです。
それが、池の金魚や庭のアリ、そしてシロクマちゃんとの水のかけっこに移りひろがります。
思いつきをぱっぱっとやるおもしろさが“いたずら”の“いたずら”たるところでしょうが、こうした子どもの心は大切にされ、平素の生活にもとりいれていきたいところです。
放りっぱなしでエスカレートをしたら暴走にもなります。
禁止やこごとでなく、こんなふうにという活かしかたが、しつけのコツとなりましょう。
こぐまちゃんの水あそびは、シャワーを洗面器でうけて音をおもしろがるようなユーモアがあります。
水をかけたアリを船にのせる思いやりもあります。
“いたずら,の中にも、明るさや、こまやかさのあることをみせてください。
<森久保仙太郎>
(引用ここまで)


1971年出版の絵本ですから、「今の子ども」というのは、50年以上前の子どもの話なんでしょう。
「今の子ども」はどうでしょうか。

こんないたずらは可愛いもんです。
「いたずら」なのか「遊び」なのか。
「水遊び」は、親が「しなさい」と促してやらせることではないです。
「自発的」というのは、確かにとても大事なものなんだということはわかります。
子どもが「自発的」にやりたがることは、たいてい、親にしてみたら、「それはちょっと・・・」と止めたくなるようなことが多いかもしれません。
でも、いつも、頭から押さえつけてしまったら、「自発的」が消えてしまうかもしれないし、変な方向に出ていくかもしれない。

「それ以上はちょっと」「ここは、こうしてほしい」という見極めはもちろん、大人として必要なんだと思います。

「いたずら」と「あそび」は近いところにあると思います。
それをどこまで、見守れるか、身近な大人は試されるなあと。
この絵本にそんなに深い意味があったとは。

読んでもらう子どもには関係のないことです。

あー。楽しそう。
あー。わかるそれ、楽しいよね。
今度やろう。

どんな感じで聞いているのかな。

8月に保育園の乳児組さん、0歳、1歳、2歳のクラスで読みました。
ニコニコしながら聞いてました。

保育士さんが「あ! **ちゃんのお弁当箱のしろくまちゃんだよ!」と嬉しそうに話してました。

見慣れた人たちが楽しそうに水遊びしてるの、嬉しいですよね。


こぐまちゃんのみずあそび
(わかやまけん 森比左志 わだよしおみ こぐま社 1971年11月)


2021年7月「こぐまちゃんとしろくまちゃん 絵本作家・わかやまけんの世界」に行った時のブログ記事


インスタグラムでも『こぐまちゃんのみずあそび』ご紹介しています


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