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人によって、出会うタイミングによって、成長によって、場所によって、受け止め方が変わる『くろいの』

くろいの
(田中清代 さく 偕成社 2018年10月)


ブックデザインは、名久井直子さん。
64ページもある。
モノクロ。

いつも「怖い絵本持ってきた?!」と強く要求する学童保育所の小学生たちに、「わたしは怖いとは思わないんだけどね」と思わせぶりにカバンから取り出して、読んでみました。

タイトルからして、(もしかしたら?)と期待させますよね。

くろいの。

扉の絵は、こちらにむかってほんのり笑顔で歩いている女の子。
親子3人とすれ違った。

この子は、一人だけど、なんかいいことあったのかな。怖い話じゃないんだろな、と予感させる。



(以下引用)
ひとりで かえる
いつもの みち、
へいの うえに
くろいのが いた。
(引用ここまで)




くろいのは、向こう側を向いて座っているみたい。
通り過ぎるとき、目が合う。
片目がある。
不穏な感じは、する。

そのあとも、何回か出会う。
でも、他の人には見えない。

女の子は、真正面から声をかける。

「あ。目がある!」

学童さんが言いました。
そう、両目がちゃんとありました。

くろいのは、喋りません。
でも、女の子を言葉を使わずに、いざないます。
女の子は、くろいのについて行きます。
大丈夫かなあ。

塀の隙間から、くぐります。

草花のある庭と家があります。

くろいのはお茶を淹れてくれます。
庭で摘んだ花をちゃぶ台の上に飾っています。
土瓶でお湯を沸かしたようです。
部屋の隅には、文机があり、文鎮と墨と硯と筆があります。
その前に貼ってあるのは、墨絵なのかな。
くろいのが描いたのかな。

なんとも穏やかな空気を感じます。

そのあと、くろいのは押入れを開けます。
なぜか、床の間に椅子があります。
その椅子を使って、押入れの上の段に入ります。
そして、襖を閉めてしまいます。

ここら辺で、学童さんたちはざわめきます。なんだか、嬉しそうです。

「ひゅー ひゅー」と
そっと風の音を読むと、シーンと聞き入る感じになります。

この場面は、真っ暗で、うっすらと輪郭が見えるばかりです。

押入れから、屋根裏に上がります。

屋根裏には、不思議な世界が広がっています。

蛾、蜘蛛、ねずみ、クワガタ、トカゲ、学童さんたちは、いろんなものを見つけます。

3見開きは、テキストがありません。
『かいじゅうたちのいるところ』みたい。
『トトロ』の世界観にも通じるような。



(以下引用)
あ、あれは なにかしら?
(引用ここまで)




ここで、学童さんが
「お母さんじゃない?」と言いました。
わたしは、内心(おおおお〜)と驚いていました。
だって、このあと女の子はこう言います。



(以下引用)
わたし、
おかあさんの ゆめを
みたわ。
(引用ここまで)




このあと、押入れから出て、塀の隙間から外に出る。
くろいのは、さっきのお花をくれる。

帰り道、女の子は、曲がり角でお父さんに会う。

これが64ページに描かれています。
モノクロの細い線。
誘う人 くろいのがいて、塀の隙間、異世界に行くためのお茶を飲み、押入れ、屋根裏へ。
会いたい人に夢で会い、あたたかな心地を味わい、また、元の世界へ戻っていく。

くろいの はなんだかわからない。
表情もわからなかったから、最初はちょっと不安な気もするけど、この女の子は怖がっていない。

「くろいの」は、人によって、出会うタイミングによって、成長によって、場所によって、受け止め方が変わるんじゃないかな。

固定せずに余白が(余黒?)がある。

わたしは、今回は、くろいのは「おかあさんの魂的なにか」かなと思いました。
なんらかの理由で、この子のお母さんはこの子のそばにはいられない。
だから、会いにきたのかな。
それをこの子も感じ取ったのかな。

お母さんがいないんだとしたら、最初はもっと不安そうな表情でも、何かが欠けているような要素があってもいいのかなと思うけど、なぜか、ない。

田中清代さんは、中学1年の時にお母様を亡くされているそうです。

このとき、わたしは田中清代さんにお会いしてます。

 
インスタグラムでも『くろいの』ご紹介しています


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