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簡単なようで難しい抽象的な概念を絵と言葉で子どもたちに易しく投げかける絵本『まんなか』

まんなか
(池内了 ぶん 東海林巨樹 え 福音館書店 かがくのとも 2024年2月号)



2023年のクリスマスに本屋さんを訪れて、この絵本を見かけて、パラパラとめくり(おもしろそうだな)と購入しました。

そのときは(おもしろそうだな)と確かに思ったのですが、なかなか読むチャンスを持てないでいました。

一度だけ、学童保育所で小学生たちに読んでみましたが、なんとなく、ピンと来なかった気がしました。

そのまま、放置していたのですが、ふと、シニア向け絵本の会で読んでみました。

どうかしらと思って。

そしたら、ものすごく興味深く聞いてくださいました。

あ。
やっぱりおもしろいですよね。

わたしは、「まんなか」という抽象的な概念を、絵本で表現しようとしているところに興味を持ちました。

なぜ、興味を持ったかというと、以前、日本語学者の金田一秀穂さんが、「前」をどう説明しますかと言われたんですね。

「前」はどこだ?
「前」ってなんだ?

2019年 文化講演会「世界一受けたい おもしろ日本語授業」に参加したときに


「前」「真ん中」
日常的に何気なく使っている言葉ではありますが、定義するのは実は難しいのではないか、と思ったんです。

「まんなか」ってどこだ?
「まんなか」ってなんだ?

簡単なようで難しい、抽象的な概念を、絵と言葉で子どもたちに易しく投げかける。
そういう挑戦をしている絵本なのではないか、と。

そう予感して購入したのを思い出しました。

循環するお庭でシニアの皆さんとこの絵本を読んだその日の夜、シニアの方がラインをくれました。
「作者は、天文学者なんですって」と。

そうなんだ〜。

折り込み付録に、作者のことばが載っています。

「宇宙に『まんなか』はあるの?」

それによると、「まんなか」が存在するには「端っこ」が必要なんだそうです。
「端っこ」がないと、「まんなか」がない。

宇宙には、端っこがないから真ん中もない。
ここまでは、わたしでも、ついていけます。

ところが、続けて
池内了さんは、こう言います。


(以下引用)
宇宙には「端っこ」も「まんなか」もないということです。だから、私たちが今いる場所が宇宙空間の「まんなか」と言っても構わないのです。
(引用ここまで)




こうなると、わたしの頭の中は「????」ハテナだらけになります。

ないのにあると言っても構わない?

簡単に「わかる」とは言えない。

絵本は、この抽象的な概念をいかにわかりやすく表現するか、ということに工夫が凝らされているのが伝わります。

まずは身近な「まんなか」を。

顔。
花。
カタツムリ。
時計。
タイヤ。
ひも。
折り紙。

洗濯物をバランスよくハサミにとめる。

3人横に並んだら。
4人横に並んだら。
5人が手を繋いで輪になったら。
まんなかは誰になるか?

ボールは?

最後は問いかけで終わります。

簡単には、わからない。
考え続ける余地を残してくれる。

(折り込み付録には、答えが書いてあるけれど)

「かがくのとも」ってチャレンジャーだなあ。

ふと思ったけど、「はしっこ」とは可愛い言葉。
「まんなかっこ」とは言わないよね。
どうでもいいか。

まんなか
(池内了 ぶん 東海林巨樹 え 福音館書店 かがくのとも 2024年2月号)

インスタグラムでも『まんなか』ご紹介しています


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