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第6回子ども読書活動推進に関するシンポジウムで準備したこと、考えたこと、反省点

2024年12月15日は、東京国際フォーラムにて、絵本図書館ネットワーク主催の
第6回子ども読書活動推進に関するシンポジウムが開催されました。



ノンフィクション作家 柳田邦男さんによる「こどものこころの解放、こころの発達」と題するご講演がありました。
柳田邦男さんのお話しについては、また別に書きたいと思います。

柳田邦男さんのご講演の前段に、
「子どもの読書活動推進を支える活動の現状と可能性について」というテーマで5人のシンポジストによるシンポジウムがありました。
90分。

コーディネーターは、専修大学文学部教授 野口武悟さん

シンポジストは、
公益社団法人全国学校図書館協議会顧問 設楽敬一さん
敬愛短期大学 非常勤講師 生田美秋さん
三郷市読書活動アドバイザー 福田孝子さん
城西国際大学メディア学部 准教授 中尾玲一さん

そして、絵本読み聞かせ講師 上甲知子

わたし以外の皆さんは、正真正銘の いわゆる有識者の方々。
上甲ひとりだけ、浮いてる感が半端なく。

でもだから、このシンポジウムにおける上甲のポジションとしては、
より参加者サイドに近いところで

・現場で子どもに絵本を読むひとりとして、有識者の方に素朴な問いかけをしてみる
・「じゃない人にどう歩み寄るか」についてお考えを聞いてみたい

そう考えました。

そして、上甲自身はどう考えるのか、ということについて、この数週間ぐるぐると考えていたのでした。

目次

子ども読書活動推進についてわたしが考えたこと

シンポジストとして登壇するにあたり、わたしが考えたこと。
持ち時間が、かなり短く、内容が盛りだくさん。
質問を投げかけるかたちで、先生方と対話できたら。

1 自己紹介
自己紹介の持ち時間5分で、わたしが子どもだったときの「読書活動」を振り返りました。
そのことから、「子ども読書活動推進」について考えをスタートさせたからです。

2 テーマトーク
参加する方は、専門家とは限らないから、当然、わかっているだろう前提で話が進んでいかないように、当たり前のことを最初に共有したい。
そもそも、「子ども読書活動推進」ってなんなんだ? それは必要なんですか? という投げかけをしました。

3 興味のない人に、どう歩み寄るか
どうしたら、興味のない人に本を読もうと思ってもらえるか。
「子ども読書活動」のための「環境の整備」を推進するとしたら、この視点は絶対に必要。
すごく難しいから、本気で考えないと。

4 言えなかったけど、大事なことは予算化
「環境の整備」の最優先事項は、司書を専門職として正規雇用。

5 今後の抱負
強制参加の絵本講座と中高生へ絵本

6 反省点
振り返り、きちんと反省することで、今後の活動に生かしたい。

1 子ども読書活動としての自己紹介

上甲が子どもだったときの読書活動を振り返ってみました。
喘息持ちで体の弱い運動も嫌いな偏屈な子どもでした。
幼稚園も学校も嫌い。
集団生活が苦手。
言いたいことを他人にはっきりと言えない子どもでした。
幼いわたしにとって、本を読むことは、逃げ場でした。
読書活動は、すなわち逃避活動。

親に絵本を読んでもらった記憶もうっすらあります。

家に絵本が少しはあったと思います。

自力で行ける距離に図書館はありませんでした。
電車に乗って隣の市の図書館まで親に連れて行ってもらうのが楽しみでした。

帰りに本屋さんで、1冊、本を買ってくれることがあるのも、楽しみでした。

わたしが選んだ本には「せっかく買うんだから、もっと字のたくさんある本にしなさい」とケチがついたのをすごくよく覚えています。
『こぎつねコンとこだぬきポン』(松野正子 文 二俣英五郎 画 童心社)に変えさせられました。(好きな絵本ではありますが)

小学校に上がったら、図書室がありました。
自分で読みたい本を選んで読むことができる環境になりました。
図書室の本は、ほぼ読んだんじゃないかっていうくらい読みました。
怪盗ルパンシリーズの『三十三棺桶島』だけが、怖くて怖くて、どうしても読めなかったのを覚えています。
(子どもが小学生になって、図書室に入ったら、わたしの名前の貸し出しカードが刺さっていたので、びっくりしました。)

中学生になったら、埃っぽくて薄暗い図書室にあんまり読みたい本がありませんでした。
唯一、谷川俊太郎さん翻訳のスヌーピーの漫画は、描き写すくらい読みました。

通学路に、みなみ書店という小さな書店があって、立ち読みしてました。
子どもの生活圏に書店が何軒かありました。
コバルト文庫にどハマりしてました。

中学2年生のとき、近くに市立図書館ができて、読みたい本はそこで借りることができるようになりました。

振り返って、誰かに読書活動を推進されていたのか?
気づきませんでした。

強いて言えば、母親が電車に乗せて、隣の市の図書館に連れて行ってくれたのは、読書活動推進、だったのかもしれません。

少なくとも、誰かから、「読め」と押し付けられた記憶はありません。

むしろ、「本ばっかり読んでないで、外で子どもらしく遊びなさい」と言われたことはあったかもしれない。

でも、不器用なわたしは本に逃避し、本の中でいろんな擬似体験をして、少しずつ少しずつ、現実社会に幼い自分を馴染ませて行ったのではないかなと思います。

もしも、それができる他の方法があるのなら、読書じゃなくてもいいのかもしれません。

わたしの場合は、読書が大きな位置を占めていました。

そして、子どもだったわたしは、たくさんの「自分だけの時間」を持っていました。

今思えば、環境は、豊かではなかったかもしれません。

子どもが本に出会うためには、大人の手助けが必要なのは確か。

このような内容で自己紹介をしました。

一つの具体例を提示することで、現在の「子ども読書活動推進」を考えるきっかけとなればと思いました。

2 そもそも「子ども読書活動推進」ってなんなんだ? それ、本当に「必要」?

そもそも、「子ども読書活動推進」ってなんなんだ?
という素朴な疑問が生まれました。

字面だけ見ると、いったい誰が何をどうしたいかよくわからない。

「読書活動」ってなんだ?
「読書」は、静かで孤独で個人的なもの。
「活動」とは、対極にあるような気がする。
もちろん、心の中は激しく動いているかもしれないけれども。

推進とは?
辞書を引くと
1 力を加えて物を前へおしすすめること。
2 物事をはかどらせ、前進させること。
とある。

前ってどこだ?
どこに向かって進むんだ?
させられるものなのか?

字だけを見たら、なんだかちょっと意味がわからなくないですか?
誰が何を推進するのか。

この言葉は、法律にある言葉です。


ーーーー

平成13年法律第154号
子どもの読書活動の推進に関する法律

(基本理念)
第二条 子ども(おおむね十八歳以下の者をいう。
以下同じ。)の読書活動は、

子どもが、
言葉を学び、
感性を磨き、
表現力を高め、
創造力を豊かなものにし、
人生をより深く生きる力を身に付けていく上で

欠くことのできないものであることにかんがみ、
すべての子どもが
あらゆる機会と
あらゆる場所において
自主的に読書活動を行うことができるよう、
積極的にそのための
環境の整備が推進されなければならない。


ーーーー
これを読んでも、「読書活動」の意味はちょっとわからないけれど。

そうか。
子ども=18歳以下。

読書はやはり、自主的なものであると。

そして、大人が積極的に推進すべきことは、その「環境の整備」である。

環境の整備は、決して子どもにはできないから、大人が推進すべきことですね。

「子ども読書活動推進」は、必要です。

ただ、「子ども読書活動推進」だと、子どもに読書をさせようとする意味に読み取れる気がしませんか。

でも、子どもの読書は、あくまでも自主的である。

わたしたち、大人がすべきことは、あくまでも「環境の整備」である。

だとしたら、

「子どものための読書環境整備推進」

の方が基本理念と合っている気がします。


3−1 読書と山登りとサーフィンは同列

読書と山登りとサーフィンは同列だ。

活動推進となると、本当は各々が好きにやったらいいことを、やりたがらないから、前に押し進めなきゃ、というニュアンスが感じられます。
(法律的な意味は「環境の整備」の推進なのだけれど)

「ランニング活動推進」
「サーフィン活動推進」
なんて言わないですもんね。

好きな人は、自分の好きなものを好きなように好きでいる。
本来ならそれでいいはずです。

絵本や読書が好きな人は、なぜか「読んだ方がいい」「読んでほしい」「読むべき」と善意を押しつけがち。

ましてや、
「本を読むのは、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであるよ」
と真正面から言ったところで、
好きな人は「そうよね」と思うだろうけど、
「すべての子ども」は、そうは思わないでしょう。

こちらの押しつけにならずに、結果的に、子どもが本を好きになったね、という感じがいい。
潜在的に、本を必要としている子どもに本が届くための環境の整備ができたらいい。

環境とは、場所だったり、人だったり、機会だったり、財源だったり、考え得ることはいろいろあるはず。


3−2 興味のない人にどうしたら、興味を持ってもらえるか

「子ども読書活動推進」において、興味のない人へどうアプローチするかという視点は、絶対に必要。
ただ、すごく難しい。

「子ども」が何に時間を使い、何にお金を使って、何に興味を持っているのか?
そういうアンテナを貼って、生活してみると、何かヒントが見つかるかもしれません。

・・・・
わたしは、2023年の夏、生まれて初めて「フェス」なるものに行ってきました。
音楽の野外イベントです。
フェスでは、アーティストがグッズを売るテントが立ち並んでいました。
そこは大行列でした。
多くの若者が「ここに」課金しているのか。
自分の時間とお金を費やしているのか。

なぜか。

それは
「魅力があるから」
「好きなアーティストのものを身につけたいから」
「好きなアーティストを応援したらいから」

もしも、この行列の先に売っているものが「絵本」「本」だったら。

そんなことが起きるためには、どうしたらいいのか?

「絵本」「本」の魅力を発信して、知ってもらうこと。
そのやり方も、気づいてもらえるやり方を工夫しなければ。


・・・

例えば。

旧ツイッターで知った紀伊國屋書店横浜店の「米津玄師と文学」フェア。

米津玄師さんは、NHKの朝の連続テレビ小説小説「虎に翼」の主題歌、ジブリ映画など、ドラマ、アニメ、CMなどで耳にすることも多く、もはやメジャーなアーティスト。
彼の歌詞には、文学的な要素が散りばめられ、そこに着目した、紀伊国屋書店の店長さんが、かなりマニアックなPOPとともに、売り場を展開しました。

飛ぶように売れるんですね。

米津玄師の音楽がいいと感じる人は、たくさんいる。
彼の音楽のベースに文学がある。読書がある。
そこから興味を持つ、読んでみたいと思う。

音楽から文学へ。

なるほど、こういう切り口があるのだなあ。
この考え方は、応用できると思いませんか?



ーーー

全然読書をしない高校生の娘が珍しく
「本を買って欲しい」と。
「TikTokでバズってるから読んでみたい」

それはこちら。

『残像に口紅を』(筒井康隆 中央公論新社 1989年)

@kengo_book これぞ文学の良さ。たまらん。#本の紹介 #おすすめの本 #小説 #小説紹介 ♬ 無音 - High-Resolution Raboratory


たった30秒の紹介です。

彼らの身近なツールで、彼らに刺さるように紹介する。
そのためにはどうしたらいいか、というヒントもここにはありますよね。

興味のない人に興味を持ってもらう、手っ取り早く確実な方法なんてないですよね。

でも、ヒントやアイディアは、その気になれば見つかるかもしれないと思いませんか?

4 法律があるなら、ちゃんと財源

法律を定めたなら、行政が責任を持って、きちんと予算化して欲しいです。
努力や工夫や熱意でなんとかできることと、できないことがあります。

司書を専門職として正規採用して欲しい。これは、最優先事項。

図書館や図書室に、今のこどもたちに必要な本を必要なだけ、買える予算をつけてほしい。

司書の専門性を高めるため、研修に予算をつけて欲しい。(そしたらわたしが研修に行きます)

ブックスタートを全ての市区町村で実施してほしい。

なんなら、本は消費税非課税にして欲しい。
(この件については、シンポジウム内ではまったく触れることができませんでしたが、考えていました)

5 今後の抱負2つ 1強制参加の絵本講座 2中学生・高校生へ絵本

子ども読書活動推進における上甲の今後の抱負は2つ

1 強制参加の絵本講座

絵本読み聞かせ講師として、ずっと関心を持っているのが、絵本や読書に興味のない人に、どうやったら興味を持ってもらえるか、ということ。
このテーマは、これからも、わたしの永遠の夏休みの自由研究。

希望者が参加するのではなくて、興味のある人が参加するのではなくて、強制参加で、絵本講座をしたい。
例えば、保護者参観日、授業参観日に抱き合わせで絵本講座開催。
絵本は興味ないけど、子どもの様子を見たいから、参加せざるを得ない状況に囲い込む。
そのうえで、「絵本っておもしろいんだね」「本っておもしろいんだね」「読んでみようかな」と思ってもらえる話をする。その機会を狙う。


2 中学生・高校生へ絵本

18歳以下のこどもへの読書活動推進として「読み聞かせ」で関わりたい。
できれば、授業一コマいただきたい。
彼らが興味を持っていることと、本をリンクさせたい。
自分のこととして考えるきっかけとなるような本との出会いに関わりたい。
そのためには、彼らのことを知りたい、と思う気持ちを大切にしたい。
彼らの文化を知りたい。


上甲の抱負にご協力いただけませんか?

お声かけいただけたら嬉しいです。

【メニュー・乳幼児の保護者向け】絵本で子育て講座(入門編)

高校や中学校で絵本の授業をさせていただけませんか?

【メニュー】【夕方からの開催も可】保育士向け絵本読み聞かせ研修


【メニュー】幼稚園教諭向け絵本読み聞かせ研修

【メニュー】読み聞かせボランティア入門講座

6 たくさんの反省点

わたしとしては、シンポジウムの反省点がたくさんあります。
ここに書くべきではないかもしれませんが、正直に書いておきます。

・自己紹介とともに、子ども読書活動推進において重要だと思うこと3つを話す予定だったのに、すっかり抜け落ちた。

・持参した4冊の本をチラ見せ紹介したかったが、1冊しかできなかった。
(一瞬、頭が真っ白になる瞬間が何回かあり、できなかった)

・「マンガを読めない大学生」にどう歩み寄るのか、という話から、「興味のない人にどう歩み寄るか」についての上甲の持ちネタをもうちょっと出してもよかった。
 結局、「最後の一言」にぶっ込んだら時間オーバーした。(持ち時間2分だったのに)(すみません)

・読書をしない人へのなんとなくの間接的なダメ出しの空気をもっと変えたかった。
(読書をする人は壁を乗り越えることができる。→読書をしない人は壁を乗り越えることができない みたいな)

・大人の読書に関する意識の向上について、わたしも喋りたかった。

・テーマトークに割ってはいるタイミングをつかめなかった。
 言いたいことはいっぱいあったのに。


わたしなりに考えたこと、反省したことなどを書いてみました。
生意気な表現があったらすみません。

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