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やなせたかしのエキスでアンパンマンの血液『あれはだれの歌 やなせたかし 詩とメルヘンの世界』 

泣く子も笑う「アンパンマン」。
子どもたちから絶大な人気を誇る「アンパンマン」の作者 やなせたかしさん。
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で北村匠海さんが演じている崇(たかし)は、放送開始から4か月経ってやっと、アンパンマンらしきものを生み出しました。
あんぱんを配るおじさんヒーロー。不評。「いいね」と言うのは妻のぶだけ。(2025年8月26日現在)

それにしても「アンパンマンのやなせたかし」になる前が、長いですね。
子どもの頃から漫画を描くのが好き、戦地で紙芝居作家、新聞社、デパートの宣伝部、作詞家、脚本、舞台美術、子どもお絵描き教室番組、イラストレーター、詩人…。

頼む人がいるということは、やはり才能があると見込んでいるからだろう。自分から売り込んでいるわけではないみたいだし。
頼まれたら断れず、しょうがなく引き受け、引き受けたからには締め切りをきっちり守り、相手を満足させるクオリティ、誠実な仕事をする。

漫画を描けずにスランプに陥るたかしに、のぶは漫画を描けと追いつめたけれど、漫画に固執しなくてもいいんじゃない? いろんな仕事がきっと全部糧になるんじゃないかしら。

アンパンマンの人気は、まだまだずっと先になりそうです。
史実では、69歳のときに、アンパンマンのテレビ放送が始まって、
70歳でブレイクしたそうです。

「あんぱん」人気にちゃっかり便乗してご紹介します。

あれはだれの歌 やなせたかし 詩とメルヘンの世界
(やなせたかし 瑞雲舎 2005年5月初版 2024年4月新装版)


この本のカバーのそでに、やなせたかしさんの直筆でこんな文章があります。
(以下引用)
この本の企画を聞いた時とてもびっくりした。
よくも悪くもこれはやなせたかしのエキスでアンパンマンの血液みたいな本だと思った。
(引用ここまで)

「やなせたかしのエキスでアンパンマンの血液」

それはどんなものなのか。

漫画、詩、イラスト、物語が収められています。
どれを読んでも、「あんぱん」のたかしとのぶの今までの映像が浮かんできます。

■漫画

冒頭に、四コマ漫画があります。

Mr.BO
帽子をかぶった「ボウ氏」。吹き出しやセリフがない。ほぼモノクロ。
ギャハハと笑える漫画ではない。自然に口角が上がるような全面的に優しい漫画。でも優しいだけじゃない。

わたしが好きなのは、4コマ漫画の一番上に泣いている女の人がいて、その人の涙が、2コマ目、3コマ目と、落ちていって、4コマ目に受け止めるボウ氏。
4コマを、4階建ての建物みたいにしちゃうんだ。泣いているのは、のぶかな。

ボウ氏と影が入れ替わっちゃう漫画はシュール。ずっと見ていると、(影ってなんだろう。自分ってなんだろう)ってなことになりかねない。

■詩

「詩は、ぜひ、声に出して誰かに読んでもらって、耳で聞くといい。目で読むのとは、違うから」
瑞雲舎の代表取締役 井上みほ子さんがそう教えてくれました。
2015年10月23日NHKの朝イチで俳優の宮崎あおいさんが、大好きな詩として「えらくなっちゃいけない」を朗読したそうです。
それを聞いて、井上さんは気づいたそうです。
実際、井上さんに読んでもらって、わたしはこの本を買うと決めました。

繰り返される「みっともない」という言葉が、自分を律する言葉として、指標になるのだな。

これが、たかしの「詩」なんだ。(「あんぱん」の影響で呼び捨てみたいになっててすみません)
「あんぱん」でたかしが日常的につぶやいていたような、ことば。思想。
すごく良いので、ぜひ、声に出して読んでみてほしいです。

「心の中のかもめ」もいい。血と海。体の中に海があるというイメージ、からの飛躍。
「ちいさな涙」も、いい。リズムもいい。
「てのひらを太陽に」もいい。歌ではなく、詩として読むとより言葉そのものを味わえる。
「あれはだれのうた」もいい。子どもの頃のたかしとのぶが見ていた景色が目に浮かぶ。
歌は時差で心に聞こえる。

■イラスト

描かれているのは、きっと、たかしとのぶだ。
スレンダーだ。仲良しだ。愛し合ってるんだ。
「アンパンマン」とは違う、写実的な絵もあります。

■物語

最後に、「チリンの鈴」が載っています。
これだけは、なぜか、すぐには読めませんでした。
ただならぬ気配を察したのかもしれません。
雑念を退けて、集中して、誠実に読もうと思っていたのかもしれません。
やっぱりだ。
「あんぱん」での、戦時中のリンと岩男が、まさに「チリンの鈴」だった。(見てない方、すみません)




「アンパンマン」の表にでは出てこない「やなせたかしのエキスでアンパンマンの血液」が確かにこの本にはある。
エキスと血液って重要なんですね。
「アンパンマン」は、子どもにウケることを狙った安易なキャラクターじゃない。
エキスも血液も、子どもたちは知らない。
知らないけど、感じることがあるんじゃないかな。
だからこそ、絶大なる人気を博す。そういうことなのかもしれません。


この本を読めば、じんわりとあたたかな気持ちが湧き起こる。
弱い自分を慰めたくなる。
奢っている自分をたしなめたくなる。
美しい清らかなものに触れることができる。

大人は手元に置いておきたい1冊。時折、読み返したい1冊。








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