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『かくれんぼ』概念を広げたり深めたりねじったりして写真に言葉をのせていく

小田原市立中央図書館での読み聞かせボランティア養成講座の1日目が終わり、帰ろうとしたら、出入り口のところにあった棚に、「ご自由にどうぞ」コーナーがありました。
除籍本、でしょうか。図書館で廃棄になった本、かな。

じろっと棚を見ていたら、
「あ!」


「おおお」

声が出ちゃった絵本。

『かくれんぼ』
(文 岩瀬成子 写真 植田正治 福音館書店 月刊たくさんのふしぎ2005年12月号)


20年前のバックナンバー。

植田正治さんの写真に、岩瀬成子さんの文!
なんと贅沢な!


植田正治さんと言えば、こちら↓
祈りのような絵本『手から、手へ』

岩瀬成子さんと言えば、こちら↓
そういうのは乱暴なんだよ「きみは知らないほうがいい」
ひとまとめにする言葉は乱暴なんだよ、すごく

鳥取の偉大なる写真家 植田正治さん(1913年ー2000年)

すでに発表済みの写真集の中から、「かくれんぼ」というキーワードで写真を選んだのですね。

とは言え、本当に隠れちゃったら、いないんだから、写らない。
「かくれんぼ」という概念を広げたり深めたりねじったりして、写真に言葉をのせていく。

1枚1枚の植田正治さんのモノクロ写真に、 岩瀬成子さんの「かくれんぼ」の言葉。


わたしがいいなあと思ったページ。

背の高い草の茂った場所に、8人の傘をさした人。
しゃがんでいるのか、傘しか見えない。
一人だけ、傘をささずに横向きに立っている。
見開きの写真。

言葉は

(以下引用)
わたしたちは名前も住所も国籍もあかしません。
たがいの顔がわからない場所で、声をあわせてうたっているのです。
(引用ここまで)


「かくれんぼ」から ここまで広がるか。



このページもいい。
猫を抱っこしている丸刈りで下駄を履いてる男の子がこっちを見ている。
猫もこっちを見ている写真。

言葉は

(以下引用)
たんすの上にもいなかったし、
こたつの中にもいなかった。
裏の家の屋根の上にも、へいの上にもいなかった。
呼んでも返事もしない。
だけど、やっと、見つけたよ。
(引用ここまで)


ここまでのかくれんぼの時間が1枚の写真の中に流れる。
猫と子どもの目つきったら。



全部が、パラレルワールドみたい。
一枚向こうのレイヤーみたい。

「たくさんのふしぎ」から、こんなに不思議で美しい1冊が出ていたとは。

贅沢すぎてビリビリする。

どこかで読んでみたい。
小学生に読んでみたい。

これ、ハードカバーにしたほうがいい。
植田正治さん好きな人も手元に置いておきたい1冊でしょう。

もう1冊、もらってきました。
その絵本のことも、いつか書けたら。



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